他人の力も借りましょ

 

年老いた親の介護は自宅でしたい、始めはそう思う人が多いと思います。在宅介護と聞いて浮かぶのは、家族が力を合わせてお年寄りの介護に献身的にあたるというイメージかもしれませんね。

 

しかし家族が協力し合う姿はとても理想的に見えますが、現代社会において介護を家族内だけで全て行なうことはまず不可能と言ってもよいでしょう。

 

なぜなら家族にはそれまでに築いてきた生活があります。親の介護に携わるということは、自分の生活の一部を削って介護にあたるということです。

 

家族として必然的にこのような状況になることが多いですが、終わりの見えない介護生活の中で「自分の時間を削っている」「自分の時間を奪われている」という気持ちが生まれてしまうと、その介護は苦労以外の何者でもなくなってしまいます。

 

親の世話をするために自分の時間を提供することはやむを得ない、とわかっていても、それがどうにもならないストレスとなって蓄積されると、介護される人との間だけでなく家族間でも気まずくなってしまうでしょう。

 

介護する上で大切なのは、家族関係を悪化させないことです。毎日ずっと同じ人と接していることは、介護者の気苦労が増えるだけでなく介護されるお年寄りにとっても閉塞感につながります。

 

家族以外の誰かと触れ合う機会が増えれば、その中で気の合う人が見つかるかもしれません。

 

在宅介護では自宅内にこもりがちなので、意識して外部からの風を入れることが大切です。また、施設職員など介護のプロはお年寄りとの接し方にも慣れ、対応もスムーズです。お年寄りにとってもよい緊張感や社会性を保ちやすくなるでしょう。

 

他人の力を借りることを「後ろめたい」と感じることはないのです。むしろ自分たちの世界を広げるよい機会と考えた方がよいと思います。家族以外の人に力を借りることは、家族関係を悪くしないための対策の一つなのです。